アートに関するessay

「芸術と市民の交差点:アート・センター・サウスフロリダ」

米国有数の富豪地帯、フロリダ/サウスビーチ。リゾートとビジネスが交錯するこの街に、他に類をみない市民が支える芸術家のための施設、「アート・センター・サウスフロリダ」は存在する。

1984年に数人のアーティストたちが非営利の芸術家コロニーとして始めたアートセンターは、「芸術家は社会において、文化・美術・知識・経済に関係するあらゆる<生活全般の質>を向上させるのに重要な貢献をする人々である」、という考えのもとに創設された組織である。この組織は、2つの支柱によって成り立っている。一つは組織を財政面で保護し、精神面で応援しているパトロン(会員)たち。アートセンター会員は、「アートパトロン」:個人$500、法人$1,000以外に、「アートフレンド」:個人会員で$45から$30と様々な形があるため、市民が自分の経済的背景に合わせて気軽に参加でき、芸術に親しめる土壌作りが出来ている。なお会員は協賛のレストランや小売店の割引が得られる他、各種芸術イベントでの特典がある。一方もう一つの支柱はアーティストたちである。年に3回行われる審査を無事通過した46名の芸術家は、このセンター内に格安でスタジオを借りることができ、様々な経済的、技術的なサポートを得ることができる。例えば、暗室や印刷機器の利用や、共同展示会へ出展することなど。またセンター主催のイベントでの講師をすることで、金銭を得ることもできる。全米、世界中のアーティストが対象になっており、フロリダ内に限らず色々な土地からアーティストが集まってきている。一方共同展示会への参加はもう少し門戸が広く、この展示会に参加すると、5週間の展示スペースが与えられるだけでなく、アートセンターが責任も持ってアーティストの商品の販売代行をしてくれる。さらに南フロリダのキューレターや歴史家といった、芸術専門家によるレビュー(評価)を得ることができるといった、より一層アーティスト自身のレベルアップに役立つための仕組みが存在する。もちろん、このプロセスに一切費用はかからない。

これぞまさに芸術家の夢の国。アーティスト同士が協力し合い、意識し合う中で、新たな作品が生み出されていく。歴史の浅い米国が、未来に向けて新しい文化的歴史を刻むこむためには、このような仕組みは必須。文化の芽が育ちにくくなってきた日本も、今ここで見習うべき点があるのではないだろうか。


参考: http://www.artcentersf.org/


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